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【SS】また、いつかこの場所で・前編

2013.06.12 (Wed)
7期末に掲示板でコッソリ書いてたRP会話文をSSに書き起こし。

ご無沙汰しております。
長らく更新が止まっておりましたが、なんとか生きています。
ただなかなか文章にまとまらないだけで(ry

今期もどうぞ宜しくお願い致します。
……と言いながらまだ前期のSSだったりするんですけどね!





 嫌な、予感がする───。

 アビーの義妹であるアンディーナは、この巡りの終わりが近付く度に近付いて来る何かを感じ取っていた。
 それは以前感じたことのある胸騒ぎ。
 このブリアティルトから排除される直前に感じたものと似ていた。けれども、彼女は即座にそれを却下した。
 妙な焦燥感に駆られているのは確かだ。そして、おそらく───

「ねぇ、お兄様。お兄様もきっと感じていらっしゃるのでしょう?」

 覇気の無い背中に呼び掛けると、アビーは生地を撹拌する手を止めて振り向いた。この世で何よりも大好きなお菓子作りをしている彼だが、その顔は晴れない。
 やはり義兄に関することだ。疑惑は確信に変わる。

「こういうことには敏感、か。異なる世界でも血筋は変わらないようだな」

 そう言うと、砂漠の国にいながら全く日に焼けていない白い顔を一層青白くさせて、懐からブローチを取り出した。
 中央に血のような赤。次期当主の証。
 その紅玉を胸元で強く握りしめる。

「───紅玉の、悪魔」
「知っていたのか。なら、話は早い」

 紅玉に封印されし悪魔。アルファベート家の罪。
 異なる世界の、自分自身とも言えるべきこの身体の持ち主も同じ境遇にあったのだろう。
 その疑問にアンディーナは一つ頷いた。

「お察しの通り、姉も以前、所持していました」

 だからこそアンディーナは知っている。その危険性も、当主になるために必要な試練だということも。
 魔力の高い姉ですら拒まれたのだ、魔力が皆無な義兄の場合は……

「魔力が足りないんだそう、だ」

 その言葉にアンディーナは無意識のうちに唇を噛み締めていた。
 紅玉からアビーにのみ訴えかけてくる声は、日ごとに増していた。
 魔力か、あるいはその代替となる血を求めている紅玉に対して、彼は供給手段を持たない。
 魔力もなく、戦闘においては身を守る術さえ身に付けてはいるものの攻撃手段は一切ないのだ。今でこそこの紅玉から溢れ出るエネルギーを変換して攻撃手段に代えてはいるが、もはや目に見える速度で消耗していた。

「私も、……世界は違えど、私もアルファベートに連なる者。きっと何かできることが、」

 俯くアンディーナに、アビーは何も言葉を返せなかった。覚悟を決めたらしい彼女の背中を見送るのが精一杯だった。

 もし、俺がコイツに喰われたら───
「(俺を してくれ)」
 なんて、頼めるわけはない。

 けれども、この紅玉はアルファベート家の心臓にして最終兵器だ。少なくともアビーはそう聞かされてきた。
 発動すれば、それで終わり。

 怖くないはずはなかった。自らが侵食される感覚が、自分のものじゃない力が流れ込む感覚、いつか自分が消えてしまうことが。
 それでも、もっと恐ろしいことは他にある。
 湧き上がる衝動に恐怖し、アビーは膝から崩れ落ちた。

「大丈夫、です」

 小さく怯えたように震えるアビーの肩を、男の物とは思えないしなやかな手が支えた。
 僧服に身を包みながらも、その頭に司祭の証はない。

「アイジェ……?」
「はい、そうです、アビーさん。
 分かっていますから大丈夫ですよ。
 安心して下さい。それを止める方法は既にアルファベート家から聞いていますので」
 彼女の手も、彼の手も、汚させる気はない。
 これが自分にできる最期の恩返し。

「(でも、あなたを一人で行かせはしないから)」
 アイジェは覚悟を決めていた。
 救われた命を返すのだと。




特に内容は無いおまけ。

TAKE1

(くく……)
(もうすぐ、だ)
(もうすぐ取り戻せる)
(今はまだ、ゆるりと待てば良い)

(……とは言え、少し試してみる価値はあるか)

 紅玉の中で独り言を一頻り呟いた彼が徐に魔力を集中し始めると、紅玉が一層輝きを増す。ただしアビーはお菓子作りに夢中で気付かない。
 しかし同時刻、教会で古い文献を読み漁っていたアイジェが手を止めて虚空を見上げていた。

「何か、良くないことが起こっているような気がしますね……」

 アビーの所へ戻るか、それともギリギリまで諦めずに調べ物を続けるべきか。迷っている時間はあまり残されていない。
 そんな迷いを生んでいるとは露知らず、紅玉は普段の輝きを取り戻していた。

(やはりまだ、そこまで封印が緩んだわけではなかったか)

 舌打ちを一つ。それでもその顔は楽しそうに歪められていた。おもちゃを買い与えられた子供のような、それでいて子供にはない残虐さを含んだ笑み。
 完全に失敗に終わったとは思わせない表情である。

「嫌な気配が少し緩んだ……?」

 教会で気を張っていたアイジェからぽつりと言葉が漏れた。

「いいえ、まだ油断できないわ。
 いずれにせよ、必ずその時がやってくるのだから───

 それまで、私にできることをしましょう」

 そう言うと、再び古書を捲り始めた。
 果たして封印は解けてしまうのか、それともアイジェが間に合うのか。
 後編へ続くのであった。
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