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【SS】赤き悪魔①

2013.04.06 (Sat)
m鯖のサロンドマッカが今期で一時おやすみなので、そろそろアイジェの過去を書かねばと筆を執ってみました。
(来期は高コスト化して悪の女幹部がメイン予定!)

はたしてこのブログに上げてもいいものなのか迷いましたが、そういうシーンだけ鍵付きで書くんじゃないかなぁ。あばうと。

エロい方面でもグロい方面でも過激な表現を含むと思います。
それこそどこの薄い本だと言わんばかりの酷さになりそうな予感。

これの序盤もそういった表現が少しあるのでご注意ください








 じわじわと迫り来る赤、瞼の裏にこびり付く炎、肌を焼く痛み、狂った笑い声───。
 穢され、異端の印を刻まれたこの身はもう、神に仕えることはできない。
 そう思いながらも間近に迫る死に助けを求めずにはいられなかった。
 醜く泣き叫び、喚き、神に縋る。けれども、神は見守るだけの存在で、決して私を助けてはくれない。それでも、最期まで生にしがみ付いていたかった。

 そして今、私は生きてここにいる。
 私を救ったのは神ではなかった。
 恐怖したはずの赤。
 血の瞳の悪魔。

◆   ◆


 マッカとの境界にほど近いオーラム南端の小さな街。その街に一つの噂が流れていた。
 奇跡のシスター。
 最近配属されたシスターは神の力を借りて死者を蘇らせることができるというものである。
 残念ながらあくまでも噂にすぎない。できるのは瀕死状態を回復させることだけ。だけれども私の下に運ばれてくるのは今にも死にそうな人か心臓の止まっている人ばかり。

「シスター、お願いします……その力でこいつを救ってやってください!」
「ですから、私はシスターではなくてですね……」

 泣いて懇願する傭兵の男はその後に続く私の言葉に全く耳を傾けずに、倒れ伏す同じく傭兵の男を私に託す。誤解を解きたいのは山々だが、目の前の怪我人の方を先にやらねば危ない状態であるのは一目で理解した。
 治療を行うのが先なのは分かるが、その後でも誤解を解くことができないのが常である。けれども。

「───奇跡をここに」

 神に祈りを捧げ、私は蘇生術(物理)を用いる。
 目の前に力無く横たわる傭兵の胸元に手を当て……所謂心臓マッサージである。心臓に刺激を与えて叩き起こす荒業とも言う。
 数回行うと男の指先が微かに動いた。目蓋も震えているようだ。

「意識は戻ったようですね。神父様、後は頼みます」
「アイジェさん、お疲れ様でした。回復はお任せ下さい」

 残念ながら、私が使えるのは蘇生術のみ。そして、この教会の神父様が使えるのは回復術のみ。以前はこの街にも蘇生術と回復術の両方を使える神父様がいたらしいけれど、心臓が止まってすぐの人しか蘇生できないという欠点を持っていたらしい。そして今は戦時中である。加えて国境にほど近いとなれば、傭兵と共に前線に赴き……流れ弾に当たって還らぬ人となったという。
 中央から逃げてきた私ではあるけれど、今ではこの街が私のいるべき所なのだと思うようになっていた。

「シスター、ファーザー、ありがとうございます! これでまた共に前線に赴けます!」

 死者を何度も叩き起こして戦場に送り込むことが、非常ながらも私にできる唯一のこととして。戦時中だから仕方ないと思いこむようにして。
 ……やはり私は逃げていたのかもしれない。

「ですから、あのっ!私はシスターじゃなくて」
 男なんです!ブラザーなんです!

 叫んだところで今回もまた誤解が解けないのはなんとなくわかっていたけれど、やはり空しいものである。

 諦めて礼拝堂に戻る廊下の途中で、ふと空を見上げた。
 先程まで晴れていた空が今にも泣き出しそうにどんよりとした真っ黒い雲を浮かべている。

「嫌な天気ですね……あ、雨」

 ぽつり、ぽつりと地面を濡らし始めたかと思えば急に土砂降りになった。干していた洗濯物は軒下だから大丈夫、と礼拝堂へ続く扉を開ければほぼ同タイミングで向かい側の───つまり、外との出入り口が開け放たれた。強い雨風が吹き荒れる。

「ここに奇跡のシスターがいると聞いてきたんだ、が」

 ばたん、と強風に煽られた扉が閉まる。そこには明らかに不審者だと言っているような深緑のフードマントに身を包んだ何者かが立っていた。目深に被ったフードのために顔も見えない。そして何より全身濡れ鼠である。
 怪しい。この人、どう見ても怪しすぎる。
 更には水音と共にこちらに一歩を踏み出そうとしているのだ。

「ス、ストップ! そこから動かないでください」

 声になんとか止まってくれたことに安堵しつつ、私は急いで今来た道を戻る。
 とにかくまずはタオルだ。
 数枚のタオルを引っ掴んで戻れば、何故か足を僅かに上げたままの姿勢で止まっていた不審者に思わず笑いが零れた。

「な、なんでそのままで止まっているのですか……ふふっ」
「ストップって言うから、つい条件反射で……そこまで笑わなくていいだろ」

 フードマントを外したその下もまた、フードつきパーカーだった。もう怪しいどころではないけれど、それよりも笑いの方が勝った。

「くっ…ふふ、ふふふっ」
「ちょ、まだ笑うのか!?」

 がっくりと項垂れた姿もまた私の笑いを誘うには十分で、一度外れてしまったタガはどうしようもなかった。
 しばらくして私の笑いがようやくおさまった頃、その人は口を開いた。

「それで、奇跡のシスターはいるの、か?」
「いえ……」

 シスターと言われて、考えるより先に否定の言葉が出ていた。やはり皆そう呼ぶのかと落胆する。

「そうか。ここじゃなかった、か」

 所詮噂は噂でしかないと溜息を吐く姿に、顔は見えなくてもきっと哀しげな表情を浮かべているのだろうと思った。

「奇跡の"シスター"はここにはいませんけれども、あなたはそのシスターに何をしてもらいたいのですか?」

 どう見ても蘇生術を使ってほしいという雰囲気ではなかった。蘇生術を求めてくる人は皆、一様に焦りと悲しみの表情で教会に掛け込んで来るものだったから。
 その人はしばらく何も言わなかった。秒針が二回りした後、ようやく重い口を開く。

「懺悔を」

 ぽつりと、小さな声だった。

「懺悔を聞いてほしいんだ」

 二度目は声量こそ僅かに上がったものの、その声は震えていた。
 私はその肩に手を置く。

「……私は、」

 蘇生術以外で修道士としての役目を望まれたのは初めてのことだった。
 この人を宥めることは簡単だ。私がその噂のシスターだと告げればいい。それでも、どうしても言い出せなかった。
 私は、周りに思われているような立派な人間じゃない。

「……いや、いいんだ」

 私が何かを言う前に、その人はゆるりと首を振った。そのフードの下ではきっと、諦めたように笑っているのだろう。

「そうだ、もし良ければ俺の懺悔、聞いてもらえないか、な?
 今日はちょっと……無理そうだから、また後日ってことで」

 そう言って、ゆっくりとフードを外す。
 綺麗な銀の髪がさらりと揺れた。顔の真ん中に垂れる一房。そして、血のような赤い瞳───。

 どくり、と心臓が高鳴る。その時、何故か私は幼き日のことを思い出していた。


「赤い悪魔に気を付けなさい」

 育ての親であるシスターに、何度も繰り返し言われていた言葉だ。

「どうして?」

 幼心に悪魔は恐ろしいものだと思ってはいたけれど、実在するものだとは思っていなかった。
 居もしないものに何故気を付けなければいけないのか。小さな私は首を傾げる。
 その感情を読み取ったシスターは、私を抱きしめて呟いた。

「だって、あなたはきっと魅入られてしまうから」



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