スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【SS】巡る刻

2013.03.30 (Sat)
気付いたら全く更新してなかった3月。ネタはあったのに文章になりませんでした。
で、ようやく重い腰を上げて雑多に書きなぐったわけですが・・・久しぶりすぎてダメだこれ。
修正するのは明日にしようそうしよう。


第6期から第7期に掛けてのケールとアンドリューの話。
ケールがヤンデレ化する話だったはずなのに全く別物に。
その名残が序盤にちょろっとだけ。









 また、時が巡る。
 3年毎に必ず訪れるその時間は、何度も期待しては裏切られ、いつしかもう二度と来なければ良いのにと願う。
 いっそ逃げてしまえば楽なのに、いっそ  してしまえば楽なのに。
 否、例えこの手に掛けたとしても、再び繰り返すだけ。
 今はただ、明けない夜を求め続ける。



「それじゃ、また、ね」

 そう言って、ケールは術式を発動させた。
 この世界からケールという存在を消すために。監視者たるケールが監視者たるため、必要以上の関わりを絶つために。

 もうじきこの巡りも終わる。
 何度となく繰り返してきた行為に、何も思うことはない。自らの存在が消え去った世界がリセットされ、そして、次の巡りをまた迎えるだけ。
 否、ケールがこの巡りと確実に縁を切ることは不可能になっていた。
 特異点。そう呼ばれる男の中にはまだケールが存在していた。別の世界から弾き出された、別の理を生きる男。
 だから嫌いなんだよ、と吐き捨てれば訳がわからないという顔で名前を呼ばれる。

「ねぇ、アンドリュー。どうして君は、君だけは記憶を維持し続けていられるんだろうね」

 幾度となく繰り返したこのループも肉体年齢が戻るだけしか影響はなく、管理組合による記憶改ざんの影響ですら受けないのは特異点であるアンドリューだけしか確認されていない。

「僕は君の事が死ぬほど嫌い」
「私だってあなたに兄の身体をべたべた触られるのは嫌です。けれども」

 相変わらずのブラコン発言もとい異常な愛情にケールは嫌悪感しか抱かなかった。

「けれども、あなたが私を助けてくれなかったらと思うと、感謝してもしきれない程です。むかつくことに」
「助けたわけじゃない、僕は」

 アンテナに引っかかったアンドリューを上からの命令でアビゲイルに伝えただけだ。その後アビゲイルが禁術を使ったことで監視レベルが引き上げられ、より身近での監視ができるようになったのであり、つまりケールはアンドリューのお陰でアビゲイルの傍にいられるのだ。ケールもまたアンドリューの存在を有り難くは思っていた。とは言え、それと性格の不一致とはまた別の話である。

「説明している時間はない」
「絶対めんどくさくなりましたね」

 嫌そうな顔をするケールに、アンドリューもそれ以上は追及しなかった。
 事実、時間はそこまで迫っていた。

「……それでは、また」

 そう言ってアンドリューは踵を返した。腕時計で時間を確認し、のんびりと歩き始める。
 少しだけその背を見つめ、すぐに反対の方向へ歩き始めたケールに声が掛かる。

「……次の巡りでは早く戻って来るんでしょうね?」

 目聡い男だ。この巡りで終盤ギリギリに部隊に加わった事を言っているのだろう。

(敵に塩を送るとはね。……貰えるものは全て貰う主義だから有り難く受け取っちゃうよ)

 ただ釘を刺すためだったのだろうか、アンドリューが返事を催促することもなかったし、ケールがそれに応える事もなかった。それでもこの二人には、それで十分だった。



 そうして、世界は何事もなかったかのように3年の時を遡る。
 しかしながら、以前の3年の全てが消えるわけではない。記憶を無くす者もいるが記憶を有す者もいる。それに、例え記憶は無くとも経験は引き継がれるものだ。
 けれども、消えてしまったケールの記憶は戻ることはない。

 ケールは以前の知り合いがこちらに見向きもしないで通り過ぎて行く様子を眺めていた。茶屋の縁台に腰掛け、山のような団子を食べ、濃いめの緑茶をすする。
 無事に記憶が消えている事を確認していたのかもしれないし、もしくは柄にもなく寂しさを感じていたのかもしれない。
 一頻り堪能すると余った団子を包んでもらい、歩き慣れた道を進む。和風の建物が途切れ、所々に洋館が見え始めたところでケールはようやく歩みを止めた。

「ど、ど、どどうしよう……変なところとかないかな?
 ああ、鏡持ってない!」

 髪を撫でつけ、服の皺を確認する。そのテンパり具合は遠目に見ても不審者である。
 その上、よし、と腹を括ったところで目的の人物がいきなり現れたのだからケールの焦りは最高潮だ。深呼吸を何度行ったところで落ち着くものではない。
 そうこうしているうちに離れていく距離。ええい、どうにでもなれと言わんばかりに、瞬間移動でその人の前に飛び出した。

「はじめまして、お姉さん」

 どこからどう見ても男である人物に対し、ケールは笑顔でそう言ってのけた。

「……はじめまして。で、何の用だ」

 警戒心を剥き出しにして、フードの男が後ずさる。が、その後ろにいた男は一つ溜息を吐いただけだった。
 つい数時間前に別れた顔が嫌そうに歪んだのを見て、ケールは顔に出さないように大笑いする。テンパっていたのがまるで嘘みたいに落ち着いていった事に、ケールは気付かなかった。

「僕はケール。時空の管理人で、門番兼異界の橋渡しを任されてて、今はアビゲイルの監視役。宜しくねっ♪」
「帰れ中二病。何故私の本来の性別と名前を知っているのかは知らないが、そんな事はどうでもいい。寝言は寝て言うもの、だ」

 分かってはいたが辛辣な拒絶に、ケールは唇を噛む。もうアビゲイルの中にケールはいない。嫌がりながらも最終的には甘やかしてくれた彼女はもういないのだ。
 前の巡りでも最初はそうだったじゃないかと自分に言い聞かせるも、この巡りではどうなるか分からないという不安が渦巻く。
 そんなケールの頭を小突いたのは嫌そうな顔をしたままのアンドリューだった。

「あなたは馬鹿ですか? 少し考えればどういう反応をされるか分かるものを……」
「それ、お前の知り合いなのか、アンドリュー」

 知り合いの知り合いということで多少警戒感が薄れたのか、アビゲイルが恐る恐る近付く。

「なら、私の性別と名前を知ってるのも納得、か。
 だが中二病発言はどうにかしてくれ……」
「でも、ホントの事なんだよっ」

 助けた訳じゃないというアンドリューの視線と借りを作った訳じゃないというケールの視線が一瞬交差し、火花を散らした。

「そうそう、これお土産のお団子ね。甘いもの好きでしょ?」

 効果音を付けるなら「ガタッ」だろうか。それまで眉間に皺を寄せていた顔が一転して笑顔になる。

「団子だと……! しかも中央町三軒目の三色団子じゃないか!
 ケールと言ったか、なかなか分かるやつだ、ね」

 出掛けるのは中止だ、と団子を持って楽しそうに引き返すアビゲイルに、ケールも嬉しいようなほっとしたような笑みを浮かべた。
 しかし、後に続こうとするケールに冷たい声が掛かる。

「どういう心変わりですか?」
「そっちが早く来いって言ったんでしょー」
「……そう、でしたね」

 初っ端から変人二人を相手にしなければならなくなったアンドリューは、痛む頭を抱えて家とは逆の方向へ歩き出した。アンドリューの様子など全く意に介さず、ケールはアビゲイルを追う。

「買い出しは私一人で行くとアビゲイルに伝えておいてください」

 ケールはやはり返事を返さず、アンドリューも念押しする事はなかった。
 時は巡れど、日常が一番である。
スポンサーサイト
トラックバックURL
http://ab1555.blog.fc2.com/tb.php/18-09a15593
トラックバック
コメント
同じ部隊で記憶継承の有無が
違うと、こういう切ない話も
多そうですな…(´・ω・`)

何だかんだで、このままちゃんと
仲良くはなれそうなので、
安心ではありますが…!
皆様の仲の良さが伝わってくる
感じであります(*´ω`)
侍 | 2013.04.05 20:36 | 編集
>侍様
仲が良…い…?
あ、ああ、喧嘩するほど仲が良いというやつですね。
(実は結構ギスギスしてるなんて言えるわけが…!)

記憶継承ばかりはループする世界ですから仕方ないですが……
恋人の記憶がなくなったけど別のループで再び恋人になるだとかそういうロマンもまた一興だと思いますん(少女漫画の読み過ぎ)
緑 | 2013.04.06 01:12 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。