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【SS】異端の修道司祭・後編

2013.02.23 (Sat)
異端の修道司祭・前編の続き。

ケールは別物。




 式の後、上司の誘いをすべて断ったアイジェは仮宿への道を一人で歩いていた。が、不気味なことに人っ子一人見当たらない状況。
 昼間とはいえ、あまりに静かすぎる住宅街にコツコツと一人分の足音だけが響き渡っていた。

(あまりにあからさま過ぎて、やってられませんね)

 こんな手を使ってくるのが本当に上層部にいるのか疑わしい。空気を切り裂いてアイジェの背後に迫った暗器は甲高い音を立てて地に落ちた。

「こんな敵地に一人でノコノコ歩いてると思いますか?」

 アイジェの不機嫌さはMAXである。

「殺生は好きではないのですが……」
「ちょ、アイジェ、こんなところで殺 しはダメだからっ」

 辺りの空気が揺らめくと同時に深緑のフードをかぶった怪しげな人物が、隠し持っていた短弓を構えるアイジェの前に飛び出した。一拍遅れて地面に叩き付けられる音とくぐもった呻き声。それを地に縫い止めているのは灰の髪を持つ少女。
 アビー、アイジェ兄妹である。二人ともアビーの幻術で姿を眩ませていたらしい。

「ミッション、コンプリート」
「ありがとうございます、アビーさん、アイジェさん」

 捕まえた男はどうみてもどこにでもいる傭兵の一人だった。オーラムは傭兵が多い国である。金さえ出せば何でもやるような者も残念ながら少なくはない。
 これでは何も情報は得られないだろう。
 残念に思いながらふっと気を緩めた時だった。
 途端──耳をつんざくような銃声。
 アビーとアイジェが目を見張ってアイジェを見る。
 アイジェの身体はふわりと浮きあがっていた。


「私の眼に映らないとでも思いましたか?」

 この男、規格外につき。
 握りしめた右手から銃弾が零れ落ちる。場の雰囲気に合わないにっこりとした笑みを浮かべたのはケールだった。
 左腕に軽々と抱えられたアイジェはきょとんとした顔でケールを見上げる。

「ケール、貴様……自分が何をやっているかわかっているのか?」

 未だ姿を現さない敵の発した声にアビーとアンディーナは警戒を強めるが、ケールはのほほんとした姿勢を崩さないまま、そっとアイジェをアンディーナに託した。

「ええ、分かってますよ。だから……」

 ケールの姿が掻き消えたと思った瞬間、少し離れた場所で銃を持った男に手甲を押し付けていた。

「だから、私の代わりにおとなしく情報を吐いてくださいね」
 私はお菓子で買収されたので。
 懐から漂う甘い香りに、暗殺者は激怒した。

「この裏切り者がっ!」




 結局のところ、暗殺者の彼もまた使い捨ての傭兵の一人であった。しかし、ケールの発言も踏まえると首謀者はアイジェの殺害が目的であるらしい。
 例の事件で殺害を失敗した彼はアイジェを自分の目の届く範囲に置いてケールを使って監視し、いつでも殺 せるようにしておきたかったのだろう。つまり、ケールが首謀者に近い場所にいたことは間違いない。
 しかし、彼はちゃっかりしていた。買収の際──と言っても、買収自体はケールから言い出したものだ──前の雇用主の話は一切しないことを条件にしていたのである。

「はぁ……また振出ですか」
「そんなことはないですよ。今後は私も協力しますから」

 アイジェは恨みがましげにケールを睨む。この男が契約を破ってまで情報をくれるとは到底思えない。

「情報は上げられないが、私の身体は好きに使えば良いんです」

 やはりあの教会の上層部だ。変態発言に引くアイジェを見てケールは慌てた。

「そういう意味じゃなくて、え、ちょっと待っあああああ」

 物理的にケールを視界から追い出したアイジェは何かを諦めたような表情を浮かべるアビーに声を掛けた。

「アビーさん、塩撒いておいてください」
「……流石に旅先にまで塩は持ってこないんだが」


 これ以降、ケールはアイジェの近辺やオーラムで暗躍を続け数多の刺客を屠ることとなるが、前の雇い主のことは一度たりとも話すことはなかった。




以下蛇足。


 叙階式より一週間の後。
 セフィドのとある教会にアイジェは立っていた。
 オーラムの教会とはまた別の荘厳な雰囲気に呑まれそうになりそうになりながら、ぼんやりと立っていた。

「ここが、西方教会の……」
「はい、そうです。……アイジェさん、ですね?」

 優しげな男性の声に名前を呼ばれてはっと振り返る。

「ようこそセフィドへおいでくださいました。
 私はエドワード・マーフィと申します。
 これからよろしくお願いいたしますね」

 エドワードの穏やかな笑みに、知らずアイジェも頬を緩めていた。

「はい、オーラムより参りました修道司祭、アイジェと申します。
 ただ、ちょっとした事情がありましてしばらくは偽名を使って過ごしたいと思いますので、どうかジェイとお呼びください」

 雰囲気の似通った二人の周囲にはほんわかとした空気が流れているようだ。
 この人とならうまくやっていけるだろう。アイジェはセフィドでの生活に期待を膨らませた。

「2年間ご指導宜しくお願いいたしますね」



 再び幕は上がる。はてさてどんな物語になるのか、未だ誰も知ることはない。


----------------キリトリ線----------------

【あの事件とか登場人物紹介とか】

・例の事件
 女と間違えられていたアイジェが男とバレて、信者に火炙りにされそうになった事件。過激表現を含むため、ここでは詳しく書けない。

・アイジェ
 修道士から修道司祭にクラスチェンジした人。穏やかそうに見えて実は意外と怖かった。

・アビー&アンディーナ
 あんまり役に立たなかった兄とその義妹。

・ケール
 必中とか察知とか瞬間移動とか持ってそうな神父さん。職業間違えてる気がする。設定はあるけどビルドがお金かかりそうだからやめたうちの一人。

・傭兵さん
 お金があればなんでもするよ!

・暗殺者さん
 上の命令には逆らえないんで……。ケールの裏切り者ォ!

・エドワードさん
 なんだかアイジェと仲良くなれそうな人。絡ませてお話書いてみるのも楽しそう。

・その他の教会の人
 モブ。
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