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【SS】異端の修道司祭・前編

2013.02.22 (Fri)
6期序盤 アイジェがセフィドに行くまでの日進月歩のお話。
m鯖に上げてたものを再録。

サロンドマッカのリーダーがアイジェに変わり、セフィドへ向かったその理由。







「私が修道司祭に、ですか?」

 教会からの使いを名乗る男は頷く。

「ええ。ブラザー・アイジェ。あなたを修道司祭へ叙階するとのことです」

 その日、砂漠を旅するパオを訪れたのは、炎天下にも関わらず闇に溶ける衣を纏った一人の神父だった。

「お断りさせていただきます」

 言い終わらないうちにぴしゃりと跳ね除けると、神父の笑みが凍り付く。

「いや、あの」
「お帰りはあちらですので、速やかにお引き取りください。そして上層部の腐りきった方々に今すぐ神に召されますよう宜しくお伝えください」
「最後まで話をああぁぁぁやめてぇぇぇっ!」

 神父を物理的に視界から追いやると、アイジェは溜息を吐いた。あの事件以来失踪かあるいは死亡扱いになっているであろうと考えていたが、まさかこうも容易く見つかってしまうとは。このパオは知り合いすら滅多に見つけられないのに。

「アビーさん、塩撒いておいてください」
「わ、わかった」

 引きつった顔で頷いたアビーが外に出たのを確認し、アイジェは満足げに笑みを浮かべた。




 そんなことがあってから早半年。アイジェはオーラム王都にある教会を訪れていた。
 なるべくならば修道司祭になんてなりたくはない。上層部の派閥争いに巻き込まれたくはないし、権力に興味もない。何よりアイジェは上層部を嫌悪していた。聖職者と言いながらその実態はあまりにも醜い。それに、個人的な理由でもひどく嫌う理由があった。
 アイジェの属する修道会は妻帯を禁じている。勿論男女の関係も許されないため(一部は掻い潜っているらしいが)、男とはいえ女顔のアイジェがどういう目で見られているかは想像に難くないだろう。

 それなのに、何故こんなところにいるのか。
 ───全ては、あの忌まわしき事件の首謀者に復讐するため。
 マッカへ逃亡していた間、アイジェは何もしていなかったわけではない。アンディーナが兄の情報を集める傍ら、アビーが義妹を救う方法を探す傍ら、常にアンテナはあちこちに張り巡らせていた。

 そしてとうとう、事件の扇動者が教会上層部のある人物と繋がっていたことを知ったのだ。
 誘いから逃げて地方の小さな教会に派遣してもらったけれども、何度も中央からラブコールは受けていた。断り続けていたことで業を煮やした何者かが強行に及んだというのも有り得ない話ではない。
 今回の叙階も、聞けば派閥争いで空席ができたという理由らしい。とすればアイジェを引っ張り出すために邪魔者を排除したとも考えられないことはない。

(ぐだぐだ考えていたら行きたくなくなってしまいましたね)
(やっぱり帰ってもいいでしょうか……)

 これから会わねばならない上層部に吐き気を催しそうになるが、なんとか溜息だけに留めておいた。
 あの事件を思い出すのは辛い。今でも時々痕が痛むことがある。けれども。アイジェは復讐するために今までやってきたのだ、今日は首謀者を特定する千載一遇の機会である。

「でもやっぱり帰りたいです」
「ここまで来たのに帰るんですか!?」

 相変わらず黒い衣を纏った神父がすぐ後ろに立っていた。あまりの近さにアイジェが後ずさる。それにも気付かず神父はあれやこれやと引き留めようと必死になっていた。
 ケールと名乗った彼はアイジェがいくら居場所を変更してもどこにでも現れた。どうやら彼は千里眼とまでは行かないにしろ、「見通す眼」を持っているらしい。
 厄介なことだ。
 もしかしたらこれからやろうとしている事もバレているのかもしれない。アイジェはチラリとケールを窺う。ばっちり目が合った。

「良かった、分かってくれたんですね」

 無駄に眩しい笑顔だった。




「これを以てブラザー・アイジェを修道司祭に叙聖する」
「有り難く拝命仕ります」

 厳かな式にもかかわらず纏わりつく視線。この中に復讐すべき相手がいる。緊張のあまり引きつった笑みしか浮かばないアイジェを落ち着かせるように、猊下はアイジェの肩を軽く叩いた。

「なお、これより2年の間、アイジェをセフィド神聖王国内教区での任に就かせる。まずはそこで元を同じとする西方教会の教義を学ぶように」
「委細、承知致しました」

 途端にギャラリーがざわめき始める。
 アイジェは修道司祭に就任するに当たって幾つか条件を出していた。その一つが、オーラム国外への派遣である。
 経験年数の足りないアイジェに勉強という名目で条件を飲んでくれた猊下には感謝している。

(さて、これでボロでも出してくれたら良いのですけど…)

 強欲な連中である。アイジェが目的ならば文句の一つや二つ垂れ流してくれるかもと淡い期待を抱いてはいたが、やはり狸親父共だ、それ以上の反応はなかった。

(ま、あまり期待はしていませんでしたが、揺さぶるくらいはできたでしょう)

 アイジェは何もない場所に向けて微笑む。その視線の先が僅かに揺らめいて見えたことをこの場の誰もが気付かなかった。

 そして、舞台は次のステージに移行する。
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